旬刊独白-18

第18話:新商品の提案に必要なことは「慈しむ心」を持つことです。

これ程同類の商品が必要なのかと思わせるほど、毎週のように新しい商品が紹介されます。どこに味の違いがあるのかと、一度全てを飲み比べてみようかと思ってしまう「缶コーヒー」や「お茶」などの飲料の氾濫。基本的な機能は、それ程大きく変わったとも思えないが、大きさや色を含めた見た目の変化は感じる「スマホ・携帯」数々。

知らされる情報の多さと速さが、地球規模で巡っている今、確かに時の流れも早く感じます。知らないことも、インターネットで検索すれば瞬時にガイドして貰え、じっくりと考えるいとまを与えて貰えないほどです。逡巡していうるうちに、次の場面へと自分の周りの景色が変換し、自分自身が時代に乗り遅れているのではないかと、要らぬ心配をする人も出てきてしまいます。周りの景観が異なったものになったからといって、決して時代に乗り遅れているわけではありません。新しく登場してくる商品を、自ら取り込むことをしないからといって、時代遅れでもないのです。自分なりの評価基準を持っているかどうかが問われます。

長く身につけているもの、以前より繰り返し使用している商品。変わらぬサービスを提供してくれるなじみの店。日本の文化の底流には、身の回りのものを「慈しむ:いつくしむ」感性がありました。かわいがって大事にする感性です。新しいモノやコトを否定しているのではありません。無為に古くからあるものを捨て去るような感覚の貧しさを憂えています。古いものを「愛おしむ:いとおしむ」愛着を感じて大切にする思いは、モノに対してだけではなく、自分の周りの多くの人に対しても働く愛情です。

新商品を開発するための絶えざる革新は、マーケティングの主要テーマです。しかしそれは、従来のものの否定から始まるのではなく、今を真摯に見つめて、未来への予兆を汲み取る崇高な行為であり、多くの人に慈しんで貰えるものの提案でもあるのです。

清野 裕司
株式会社マップス

投稿者:

maps-staff

一刻一歩に最善を尽くそうと今もする。変わる鋭さと変わらぬ頑固さがある。

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