第19話:「変えず・変わらず」にある正月で、想い新たに新年を迎えたい。
残り少なくなった今年を思いつつ、新しい年を迎えると、何事にも気分一新したくなるのが人の常なのかもしれません。しかし最近は、必ずしもそうではないケースに多く出逢います。「正月気分を感じない」といった声はよく聞くことですが、街の動き自身が日常とさして変わらぬ動きを見せているからだと思います。かつては、正月は多くの店がシャッターを閉め、少なくとも元旦には、家の物干しに洗濯物がぶら下がる光景は殆どありませんでした。日常の時の流れや作業を止めて、過ぎた年を省みて、合わせてこの年への想いを馳せるのが通常であったように思います。
しかし今、街は通常の時の流れで動いているように見えます。店もいくつかは開いている。コンビニエンスストアは大晦日も元旦もなく、煌々と電気がついている。日常の食品が、何事も無いように平然と並んでいる。何も普段と違うことをしなくてもいいではないかと言われているようです。正月気分というのは普段とは違うと思うのですが、街の景観が一気に変わるわけではなく、日常の延長線上に正月があるようです。
時の流れをたまに止めてみるのも良いのではないかと思います。今までとは違った世界が見えてくることがあるもの。通常の生活では殆ど縁のない神社仏閣に足を運ぶ。改めて、清新な気が宿る気分になります。お参りの帰りに、普段立ち寄る店が閉まったままの街並みを歩く。今まで見過ごしていた店の看板や案内が、ふと眼に留まることもあります。新しさの発見とは、相手が変わるのではなく、自分のモノの見方を変えることから始まることを知ります。
今まで、脈々と続いていたことを無理に変えることはありません。多くの人が受容していたものを、一方的な考えで壊してしまう必要もないのです。重要なことは、見方を変えることです。すると、今までとは変わった世界が見えてくるもの。正月とは、自分自身のモノの見方や考え方の偏りを是正するための、日常とは異なる時の流れなのかもしれません。新しい年を前にして、ふと思った問題意識。
清野裕司
株式会社マップス