旬刊独白ー24

マーケティング能力の一つは「語彙」豊富になること。

 文字に限らず、画像のやり取りが手元でできるようになりました。確かに、自分の今の気分を伝えようとすれば、言葉で説明するよりも、表情や態度を見せた方が相手に素直に伝達できることもあります。その状況を文章に表現しようと思えば、何枚にもわたるレポートが必要でしょう。街並みや景観,その地における天候を知るのではなく、実感度を高めるのはやはり視覚情報の方が勝っていると考えられます。
ただ、マーケティングを考えるときに忘れてならないことは、ある現象や事実をどのように読み解くかという発想です。同じことに出会ったとしても解釈はさまざまあります。異なる環境を見るのは、「個となる」事実を読むことに通じるもの。「見た」結果を「読む」こと、それは言語での表現の必要性を言っています。いかに言い表すかということです。文学的表現の必要性を問うているのではありません。さまざまな表現方法を問うているのです。
マーケティング・スタッフに表現力が問われるのも、顧客の行動や店舗の動きを、動画像に限らず自らの言葉で他者と共有することで、次なる戦略展開糸口を発見する必要があるからです。しかし、これが難しい。言語を持たずに感覚論が横行する風潮があるからです。「~って言うか・・・○○的には・・・」の自己解釈。「マジっすか?」の疑問詞。何でも「超」のつく評価語。歳を重ねたので、このような表現についていけない、というのではなく、市場の事実に関して、共通の認識をもつことが困難になってしまうことへの危惧があります。
ここ数年、日本語に関する書籍も多く出版されています。その意味するところは、学習する「国語」ではなく、この国にある文化や自らの意志を伝える根本にある「語彙」豊富な日本語への注目です。ある現象を、どのように読み解くのか。自らの心の奥底にある思いを、どう説明するのか。表出を言葉ですることの意味を、マーケティング・スタッフは常に考え、表現力を高めることを忘れずにいたいもの、と私は考えています。

語彙の豊富さはまた、大人の教養の尺度かも知れない。

清野 裕司
株式会社マップス

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一刻一歩に最善を尽くそうと今もする。変わる鋭さと変わらぬ頑固さがある。

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