ビジネス徒然草-29

「街に出たなら看板を見る」を今も続けて。

株式会社マップスの草創期には、大学でマーケティングを学んでいたり興味を持つ学生がオフィスに出入りし、「学生スタッフ」として共に頭と体に汗をかいていた。百貨店店頭におけるブランド商品の品揃えの具合や、ガソリンスタンドでの給油以外の人的なサービスの内容などについては、彼らと共に体に汗して駆け回った。また、研究者を交えた多様な研究プロジェクトでは、その議論内容の議事録づくりで大いに頭に汗をかいて貰っていた。

そんな彼等に、年長者である自分が都度思ったことやマーケティング思考に必要な態度や行動を語った語録がある。「学生スタッフへの思考の言葉」である。その中の一つに「街に出たならば、常に看板を見ろ」というのがある。

今も実行していることだが、今という時代に何が注目されているのかがわかるものである。特に旧来からある商店街などにあっては、数か月ぶりに出向くと店並が変わっていることに驚くことがある。少なくとも3年ほど前までには、これほど多くのマスク専門店が並ぶとは思いもよらなかった。ドラッグストアの林立にも目を見張る。数メートルおきに並んでいるところもある。薬をというよりも、化粧品や衛生用品、健康食品、日用の雑貨小物を購入する拠点になっているように見られる。

勿論、街には多くの看板に限らず、ポスターや店頭での客の呼び込みの声も聞こえてくる。飲料の自動販売機では、「100円」と大書した印が目に付く。同じ缶コーヒーが、こちらでは130円、あちらでは120円、しかしこの自販機で買えば100円、と価格の相対的な「安さ」を大きな価値として訴えかけている。であれば、すべての飲料が100円なのかと思えばそうではない。何種類かがある中での数本が差をつけている。

小さなことも、時代の表現と思って見ていると、いろいろなことに気づいたり感じたりするものである。ロシアの動きも影響の一つに加わるが、多くの生活用品の値上げが続いている。にもかかわらず、給料はさほどの上昇にならず家計を圧迫し続けている。相対的に低廉なものに価値を見出すようになり、価格の差が競争要因として大きな意味を持つようになる。

提供者側からすれば、原材料費や物流費などが高騰し、従来の価格ではやっていけなくなり、「やむなく値上げ」の看板も見えてくるようになる。どうにも今の街角には、明るい光が見えないままに時が刻まれていくように感じる。

Management Partner Staff
清野 裕司

投稿者:

maps-staff

一刻一歩に最善を尽くそうと今もする。変わる鋭さと変わらぬ頑固さがある。

PAGE TOP