言葉を紡いで人に伝えるためにも「源流」を辿る。
私にマーケティング・マインドを注入して下さり、その面白さや難しさを教えて下さった恩師は、慶応義塾大学名誉教授の故村田昭治先生である。自分にとって、人生最大の出会いとご縁を頂いたと、今も強く思っている。
先生のすばらしさは枚挙にいとまないと思えるが、中でも人に伝える(教える)際の言葉遣いの大切さを教えて下さったことかと思う。それまでに聞いたこともないような単語が、マーケティングを学び初めのころには数多く飛び出してくる。その定義を知りたければ(スマホもない時代)、文献を読みこんで自分のレベルを承知することである。併せて、日々の振る舞いや小さな心がけを積み重ねることで、他人への注目も増し、世の中の変化に敏感にもなるものだ。
先生が学生の私に伝え諭し導いて下さった文字を自分なりに解釈して、その後の半世紀近い社会人生活を送っているように感じている。
遺して下さった文字の数々の、ほんの一部を紹介しよう。
「志」:将来に向けて自らの心が指しているのが「こころざし」。自分は常に近い将来何をやりたいかを考えて行動しろ。
「想」:「思う」のは自分の脳を示したに過ぎない。考えて思うという行為は、高い木に登って目を未来に向けることだ。
「拓」:仕事には「こなす」と「ひらく」の二つのタイプがある。「こなす」は「熟す」という字になる。何事も継続することだ。だが、それだけではない。新たなものに挑戦しろ。それが「拓く」だ。
「雑」:今は無用と思えるものにも積極的に挑戦しろ。雑用や雑役と言われるものに、仕事の本質が隠れている場合が多い。どんなことにも積極的に取り組め。
「挑」:何事もまずやってみることだ。そうすると、自分のできないことが良く見えてくる。やりもせずに、とやかく評論して結論付けることはよせ。
「慮」:常に相手のことに思いを寄せるようにしろ。「おもんぱかる」という言葉がある。自分一人の考えを押し付けるのではなく、他者の意見も聞き入れることだ。
「優」:本当のやさしさを身に着けろ。「やさしい」というのは、自分に対しては「厳しい」ことを意味している。常に自分のレベルを高めることを考えろ。
ごく一部のものに過ぎないが、20代の自分が大きな刺激を受けた文字のいくつか。今も、往時私に言われた先生の言葉遣いが聞こえてくる。
Management Partner Staff
清野 裕司