旬刊独白-53

マーケティングは、顧客との合意形成プロセスでもある。

同じ時に同じ場面の体験をしても、人によってその折々の印象や感覚は異なったものとして残るもの。ある人にとっては感動的なことであったとしても、他者にとってみればさしたる感動をもたらさないことがある。人それぞれに、積み重ねてきた歴史や知見は異なるものであり、同じ刺激に対しての反応が異なるのは当然である。ある時間を共有していた学生時代の友人に、自分自身が体験し刺激を受けたことを話しても、その時に一緒していたにも拘らず、ほとんど記憶に残っておらず、ましてや刺激など受けてもいない。不思議にも思うのだが感覚は人それぞれなので、当然といえば当然である。

しかし、ある目的を持ってゴールを目指して多くのメンバーと共に行動をする際には、一人ひとりの感覚や感性を各自が勝手にゴリ押ししたのでは、ことは運ばなくなってしまう。目的を共有し、目指すべき目標に向かってチームメンバーが合意のもとで力を合わせる。決してきれいごとではなく、日々の仕事はそのような動きをもって進むものである。全員の合意が、責任の所在を不鮮明にするというのではなく、各自の役割を明解にしながら、多くの意志を統合することが、チームを預かるリーダーの役割にもなるであろう。

当然、全員が納得するとなれば、腹を割った話し合いも必要になる。その議論の過程では、他者の意見に対する「反論」もあることが考えられる。ただひたすら押し黙って、事の成り行きに身を任せ、決まったことを渋々やっていたのでは、プロジェクト自体が滞ってしまう。また、所期の目的を達成することも難しくなる。「合意形成」とは、さまざまな意見を丸めて、総花的で角の取れた結論を導くことではない。ある一人の人の意見に全員が賛同することもあり得るであろう。また、たとえ「反論」があったとしても、何に対しても「反対」の姿勢では後ろ向きになってしまう。

そのように考えると、マーケティングの思考の基本は、仲間や顧客との「合意形成」のプロセスにあると捉えることが出来るであろう。数年前、インターネット空間で話題になった「顧客の十戒」を、今一度読み直してみるとよい。

Management Partner Staff
清野 裕司

※PDF:顧客の十戒

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一刻一歩に最善を尽くそうと今もする。変わる鋭さと変わらぬ頑固さがある。

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