コクーン(cocoon:まゆ)の思考では未来は描けない。
この数年、自分自身の気分もそうなのだが、社会的に何とは無しの淀んだ空気がある。コロナウィルスやウクライナの問題に限らず、毎日見聞きするニュースに、明るく気分を高めてくれるものが少ないからだろうか。国際的な事件や社会制度上の問題に限らず、身近でも驚きを感じさせる事件が起きている。TVやネットで見るに堪えず、聞くに堪えない話題に多く接する。
こうした社会環境の中で、それでも更に新しいビジネスチャンスを発見しようと心掛けるのがマーケティング・スタッフのもつ宿命的役割である。時代の風に流されると、どうしても暗い話が中心になり、そして、他者のことではなく自分たちのことだけを考える罠に陥ってしまう。
一つの商品がヒットをして、多くの生活者に受容されると、一気呵成に同質の商品が溢れかえってくるのも、その現われかと思うことがある。健康を意識する生活が当たり前になり、自分のことは自分で護る、といった意識の高揚があると、健康の細分化が始まる。「中性脂肪」対応、「血糖値」対応、「疲労回復」対応・・・まさに百花繚乱。受け手である生活者側も、情報や商品機能を峻別するのが大変。何を、誰を信じればよいのかがはっきりしなくなってしまう。TVから流れる情報も、新聞や雑誌を読んでも、ネットで検索してみても、どれもこれも身体に良さそうで迷い道にはまってしまう。
相手の立場に立って考えれば、リアルな情報の提供こそが重要であることはわかっているのだが、その状況をどのように伝達するかを熟慮しなければならない。しかし、いま流行っているものにそのまま乗ってしまう動きが急になり、“業界こぞって”といった動きの中に身を置いていた方が、安全で安心の気分になるのだろうか。
ある世界に入り込んでしまうことの怖さがある。その世界から自分の身を出そうとしなくなってしまうからである。さながら、繭(まゆ:cocoon/コクーン)のように、身を護ることに意識が働く。マーケティング・スタッフがコクーンになってしまっては、暗い部屋に閉じこもった引きこもりになってしまう。マーケティングは、殻を破って未来を描く思考をガイドしているのを忘れずにいてほしい。
Management Partner Staff
清野 裕司