マーケティングは顧客との「貸し借り」のバランスづくり。
消費者金融が発するメッセージに「ご利用は計画的に」がある。借りたものは返す、世の道理である。返せないなら借りるな。これも道理であろう。しかし、今の世情はどうやらそうではないようで、「返せそうもないが、まあ何とかなるだろう」といったお気楽モードも一部見られるから切ない。30年ほど前、“Play Now,Pay Later”のキャッチフレーズがクレジット会社から流れていたことがある。楽しみは先に、但しその借りは返すように言い聞かせていたものである。
最近は「勝ち組/負け組」に代表される二者択一的な判断基準が横行しているように感じる。どちらを選ぶかと言われれば、多くは負の状況よりも正の状況を選択したくなるのも人情であろう。しかし、一方の極があればその対極が必ずあるもの。両者のバランスによって人生は創り出されている。一方の極にのみ身を置いていると、どうしても思考の回路や、何よりも暮らしの姿勢自身が偏ったものになってしまう。「偏見、偏狭、偏食、偏屈・・・」ほめられた言葉は並ばない。
ビジネスの世界も、経済的な対価のやり取りに限らず、業務上の貸し借りが常に存在する。なぜ自分だけがこんな思いをしなければならないのか、と苦渋に満ちた顔で現在の仕事を語る人に出会うことがある。しかし、終生そのような状況が続くわけではない。その仕事は多くの人に貸しを作っているはず。いつか利息がついて返ってくることがあるもの。ただ、その返済に気づかぬままでいることがあり、自分は貸しばかり作っていると思い込んでしまうようだ。
借りを作るよりも貸しを作った方が、将来が楽しみだと私は思っている。借りると返さなくてはならない。それよりも、今の仕事がいつか廻って戻ってくることを楽しみにしていたいもの。
マーケティングは、顧客への一方的な貸付ではなく、顧客から「ありがとう」の言葉が返ってくる、貸し借りのバランス行動ですから。
Managenment Partner Staff
清野 裕司