ビジネス徒然草43

「百均」の隆盛。「百貨」の衰退。生活環境や行動の変化実感の時。

2023年1月31日、渋谷の東急百貨店本店が55年の歴史に幕を閉じた。多くの人が昔を懐かしんで来店していた営業最終日のよく見かける風景であった。私も、高校生の頃より生活行動のアクセス拠点が渋谷であったので、駅ビルとしてあった東急東横店には何度か立ち寄ったものである。今回閉店の本店は、言ってみれば渋谷の街の突き当りになるようなところに立地しており、品揃えも比較的ハイクラスのものが多かったように思う。したがって、若者よりも中高年の方々が、ゆったりとした時間の中で買い物を楽しむ空間の印象が強かった。

渋谷には他に西武百貨店がある。元来が西武百貨店といえば池袋を拠点としており、その地で東武百貨店と鉄道系同士の激しい戦いが続いていた。西武が渋谷に。まさに「西部(西武)戦線異状あり」と、昔の本のタイトルを模してはやし立てられていたものである。思えば東急も鉄道系ではある。

東京に限らず、地方の百貨店でも閉店の案内を耳にするようになった。北海道帯広の「藤丸」、山形県で頑張ってきた「大沼」といった、その地における名店が閉鎖せざるを得ない環境に置かれている。昭和30年代には、「百華店」といわれるほど、憧れの存在であり、地域の文化発信の中心拠点でもあった百貨店が今、大きく変換せざるを得ない岐路に立っている。銀座にあった松坂屋も、今は「銀座シックス」として、過去の百貨店とは異なる業容を示している。

一方で、100円均一の商品が並ぶ「百均」のリーダー的存在でもある「ダイソー」が創業「50周年」を祝い活発な店舗展開を続けている。かつては、メインの買い物をサブとして支え、また時にものめずらしさの発見拠点でもあった「百均」が、ここにきて日常の生活用品が軒並み値上がりするなかでは、その存在感をますます増し、買い物行動の中核的存在にまでなってきている様子もうかがえる。

何とも皮肉な巡り合わせである。「百貨」に憧れていた時代。なかなか手にすることもないような高位なものを眺めながら、いつの日か自分もあのようなものを手にしたいと思わせた「百貨店」。そんなものよりも、合理的に効率よく暮らす道具を求めていた方がよいと感じさせる「百均」。

両者のバランスがとれていることが、健全な消費環境だと思うのだが、どうも最近は、そうとも言い切れないようだ。この国の豊かさとは何かと問うている。そのように感じる流通の変革である。

Management Partner Staff
清野 裕司

投稿者:

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一刻一歩に最善を尽くそうと今もする。変わる鋭さと変わらぬ頑固さがある。

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